『2,000円以上購入で送料無料』がなぜ失敗したのか?

2016年5月から2016年8月末の4ヶ月間。ベビー服ネットショップ『べびちゅ』では、
もともと『8,000円以上購入で送料無料』だったのを『2,000円以上購入で送料無料』に変更していました。

変更した理由は、

  • 買いやすくなり、新規購入者が増える
  • 既存のお客さまにも喜んでいただける
  • 2016年4月までのクーポンによるテストで十分利益が出ることが確認された

でした。

しかし、目算は大きく外れ、大失敗に終わりました。

『2,000円以上購入で送料無料』期間の月次収支は数百万円単位での大赤字。
受注数は思ったように伸びず、客単価と粗利単価は思った以上に減少しました。

ちなみに、粗利単価は、( 粗利 ÷ 受注件数 )で計算しています。
べびちゅでは、粗利を大きくするための指標として、粗利単価を非常に重要視しています。
その粗利単価まで思った以上に下がったのですから、成功する要素は全くありません。

2014年1月31日のオープン以来。
べびちゅ史上、最大級の失敗だったと言えるでしょう。

この失敗が起きた1番の原因は、弊社の『思い込み』でした。
『Amazonや楽天が作り出した送料無料の流れが世間の常識になっている』
『お客様は安さを重視している』

こういう『思い込み』があったからこそ、『2,000円以上購入で送料無料』に踏み切ったと言えます。
しかし、送料無料や安いことを重視するお客様ばかりではないことを弊社はこの失敗から学びました。

そもそも資金力の弱いネットショップがAmazonや楽天と同じような送料無料サービスで勝負すること自体が無謀だったのです・・・。

『もう同じような失敗を繰り返したくない。』
『他のネットショップに同じような失敗をしてほしくない。』

そんな思いで、この記事を書いています。
この記事の内容が、貴社のネットショップ運営に少しでも役立てば幸いです。

何が失敗だったのか?

失敗、失敗と連呼していますが、何が失敗だったのでしょう?

まず、2016年6~8月(2,000円以上で送料無料)と2015年6~8月(8,000円以上で送料無料)の客単価、粗利単価を比較してみたいと思います。

客単価はどう変わったか?

客単価の前年との比較は次のとおりです。

  6月 7月 8月
2016年 4,709円 4,433円 4,643円
2015年 6,793円 6,314円 6,241円
前年との差額 -2,084円 -1,881円 -1,598円
前年比 69.3% 70.2% 74.4%

粗利単価はどう変わったか?

粗利単価の前年との比較は次のとおりです。

  6月 7月 8月
2016年 1,911円 1,531円 1,746円
2015年 3,088円 2,028円 2,784円
前年との差額 -1,177円 -497円 -1,038円
前年比 61.9% 75.5% 62.7%

客単価と粗利単価の比較から分かったこと

以上のように、前年と比較し、客単価、粗利単価は30%前後減少してしまいました。

前年と比較すれば、売上も粗利も増加しました。
しかし、受注件数の増加に伴い、スタッフの人数も増えました。
粗利単価が減少したことで、発送にかかる人件費やネットショップの運営費用などがまかなえなくなってしまったのです。

結果、人件費などのネットショップ運営にかかるコストを差し引いた最終の損益は赤字となりました。

このことに気付いたのは、2016年8月の終わりで、8月末に既存の会員に向け、お詫びのご連絡をしたうえで、8,000円以上購入で送料無料に戻すことにしました。

8,000円以上購入で送料無料に戻してみたものの。。。

2016年9月から8,000円以上購入で送料無料に戻しましたが、客単価、粗利単価の水準感が戻るのに6ヶ月程度かかりました。

これは、以前『クーポン施策が抱えている3つの問題点』で説明した流れと同じようなことが起きたのだと考えられます。

つまり、

  1. 2000円以上送料無料を購入時特典にする
  2. 受注件数が増加し、客単価と粗利単価が減少する
  3. 受注件数をさらに伸ばして、売上と粗利を伸ばそうとする
  4. 受注件数伸ばす施策で、粗利単価が減少する
  5. 粗利が下がっていく
  6. 『2,000円以上で送料無料』によって、安売りショップのイメージが出来ていく
  7. 安いから買うお客様が増え、上得意客がじわじわ離れていく
  8. 粗利単価が減少する
  9. 粗利が下がっていく

べびちゅにとって、痛い失敗でしたが学ぶことも多かったです。

お詫びのメールに対して
「なんで2000円以上購入で送料無料にしたのですか?私は8000円買わないと送料無料にならないからべびちゅで買っていたんです。ここで買うことが嬉しかったのに、誰でも買えるお店になったのが残念でした。」
という趣旨の返信を何通も頂きました。

「8000円以上購入で送料無料という条件に戻すのはけしからん!」という趣旨の返信はたったの2通しか来なかったのです。
送料無料や送料が安いことはお客様に喜ばれることだというのは弊社の思い込みでした。

クーポンやセールなど一つ一つの施策で成功することは、もちろん大事です。
でも、『長期的に見た時に売上や粗利を下げることになってないか』について、慎重に検討しておくことが重要です。

長期的な影響は、すぐには表面化せず、じわじわと変化していきます。
そして、元の状態に戻すには、時間がかかってしまいます。

まとめ

  • べびちゅの場合、『2,000円以上送料無料』は大失敗に終わりました。
  • 客単価、粗利単価は大幅に下がり、利益が出にくい構造になってしまいました。
  • 客単価、粗利単価は、2,000円以上送料無料を8,000円以上送料無料に戻してもすぐには元の水準に戻りません。
  • 安いから買うお客さまが増え、上得意客が離れていったのです。
  • 元のお客様構成に戻るのに、6ヶ月近くかかりました。
  • そういった意味でも、大きく粗利単価が変わる施策の変更は、慎重に行う必要があります。
  • 失敗した場合、できるだけ早いタイミングで施策を終了することが重要です。
  • 万が一失敗した場合、元の状態に戻すのに非常に時間がかかることも覚悟しておいてください。

記事を書いた人

加藤

在庫削減と仕入れ最適化の講座を担当しています。このレクチャーを読んでいただいたECショップのみなさまの在庫がうまく削減され、仕入れが最適化されればという思いで、執筆しました。 ご質問などありましたら、問い合わせフォームからお送り下さい。順番に返信させて頂きます。