経常利益を2倍に!!利益構造の改善方法

前回の記事、ECショップ その粗利計算は間違っている!で、多くのECが粗利の計算式を間違えているという指摘をしました。

そして、利益を出すための正しい粗利計算式として

粗利 = 売上 - 変動費
変動費 = 仕入れ値 + 運賃 + クレジットカード決済手数料 + 梱包資材費

という式を紹介しました。

ところで皆さん、やっぱり利益を増やしたいですよね。

正しい粗利計算式がわかると、自社のECがどのような利益構造なのかが手に取るようにわかります。
そして利益構造がわかると、何をすれば利益を増やすことができるのかが一目瞭然になります

この記事では利益構造を可視化する方法を説明します。
足し算・引き算・掛け算・割り算ができれば、どなたでも簡単に出来る方法です。
ぜひ皆さんのECでも同じように計算して利益構造を可視化してみて下さい。
経常利益を2倍3倍に伸ばすための道筋がきっと見えてくるはずですよ。

1受注当たりの単価構成を明らかにしよう

利益構造を明確にするための第一歩は、あなたのECの単価構成を明確にすることです。
下記の表をご覧下さい。
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月間でこのような売上、変動費、粗利のECがあると仮定します。
そのECの月間の受注件数が2000件だとすると、単純に割り算することで下記のような単価構成だということがわかります。
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経常利益が生むコスト構造を明らかにしよう

先ほどの単価構成を使うと、このECが経常利益を生むまでのコスト構造がわかります
仮にこのECの固定費を月550万円とします。
下記の表をご覧下さい。
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イコールの左側が単価構成と受注件数の掛け算、イコールの右側がその結果になっています。
右側の図を見ると、コスト構造を視覚的に理解することができます。

  • 売上=変動費+粗利
  • 粗利=固定費+経常利益

この2つを視覚的に理解できれば、利益構造の可視化は出来たのも同然です。

利益構造を可視化しよう

このECは月間の経常利益が50万円でした。
それではここまでの話をもとに、何をすると経常利益が0円になってしまうかを考えてみます。

固定費が何円になると経常利益が0円になるか


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単価構成も受注件数も変わりませんので、売上も変動費も粗利も変わりません。
つまり、経常利益が0円になる時の固定費は、粗利=固定費+経常利益の式に当てはめると、

固定費=粗利-経常利益=600万円-0円=600万円

となります。

つまり固定費が550万円から50万円増えて600万円になると経常利益が0円になります。
これを割合にすると、600万円÷550万円=1.09ですので、固定費は9%増加すると経常利益が0円になることがわかります。

受注件数が何件になると経常利益が0円になるか


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固定費は受注件数に関係なく固定だから固定費と呼ばれますので、550万円のままです。
そうすると、

粗利=固定費+経常利益=550万円+0円=550万円

となります。
粗利単価は1受注当たりの単価ですので受注件数には関係なく、3000円のままです。
従って、

受注件数=粗利÷粗利単価=550万円÷3000円=1833件

となります。

つまり、受注件数が2000件から167件減って1833件になると、経常利益が0円になります。
これを割合にすると、1833件÷2000件=0.916ですので、受注件数は8.4%減少すると経常利益が0円になることがわかります。

変動費単価が何円になると経常利益が0円になるか


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固定費は受注件数に関係なく固定だから固定費と呼ばれますので、550万円のままです。
そうすると、

粗利=固定費+経常利益=550万円+0円=550万円

となります。
次に、客単価と受注件数も変動費単価には無関係ですので6000円と2000件のままとなり、売上も1200万円のままになります。
従って、

変動費=売上-粗利=1200万円-550万円=650万円
変動費単価=変動費÷受注件数=650万円÷2000件=3250円

となります。

つまり、変動費単価が3000円から250円増えて3250円になると、経常利益が0円になります。
これを割合にすると、3250円÷3000円=1.083ですので、変動費単価は8.3%増加すると経常利益が0円になることがわかります。

客単価が何円になると経常利益が0円になるか


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固定費は受注件数に関係なく固定だから固定費と呼ばれますので、550万円のままです。
そうすると、

粗利=固定費+経常利益=550万円+0円=550万円

となります。
次に、変動費単価と受注件数も客単価には無関係ですので3000円と2000件のままとなり、変動費も600万円のままとなります。
従って、

売上=変動費+粗利=600万円+550万円=1150万円
客単価=売上÷受注件数=1150万円÷2000件=5750円

となります。

つまり、客単価が6000円から250円減って5750円になると、経常利益が0円になります。
これを割合にすると、5750円÷6000円=0.958ですので、客単価が4.2%減少すると経常利益が0円になることがわかります。

経常利益への影響度を考えてみよう

ここまでで利益構造の可視化ができました。
でも可視化したことをゴールにしてはいけません。
可視化した情報をもとに、利益を増やすにはどうすれば良いのかを考える必要があります。

下記の表はここまでの計算結果をまとめたものです。
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まずはこの表を使って利益を増やすための頭の使い方を紹介します。

この表では、減少か増加かは重要ではありません

この表が示している最も重要なことは、経常利益0円という共通の目標を設定した時に、最も少ない変化量でそれを達成する項目が何かわかるということです。

客単価はたった4.2%減少するだけで経常利益が0円になるのに対し、固定費は9.1%増加しない限り経常利益が0円にならないのです。
言い換えると、影響度に倍以上の差があるということですね。

非常に面白い結果が出ていると思います。

ちょっと想像してみて下さい。
もしあなたがこのECの運営に関わっているとしましょう。
そして上記の表が手元にあるとします。
すると、あなたは下記のようなことを頭の中で考えることができるのです。

これから広告費(つまり固定費)を50万円までなら増額しても経常利益はトントンだな。
新規顧客を開拓するのも悪くないな。

いや、逆に今既に使っている広告費(つまり固定費)を減額しても、受注件数の減少が167件以内なら経常利益はトントンだな。
むしろ、広告費を削減した分だけ経常利益が残るはずだ。

もっと喜ばれるラッピングにしたいと思っていたけど、どうやら1発送あたりのラッピング資材費(つまり変動費単価)を最大250円まで増額しても経常利益はトントンだな。

ちょっと受注件数を増やしたいから値引きとかクーポンでも配ろうかと思っていたけど、客単価が250円下がるだけで経常利益がトントンになってしまうのか。
危ないから値引きはしない方がいいな。
でも受注件数は167件までなら下がっても経常利益はトントンだな。

いかがですか?
利益構造を可視化すると、ECの運営の仕方が変わってくる気がしませんか?

経常利益を2倍3倍にするには?

先ほどの利益構造の可視化ロジックと同じ計算方法を使い、経常利益を2倍の100万円、3倍の150万円という目標にした場合の影響度を計算してみました。
(現状の月間の経常利益は50万円という想定です)
表にしましたのでご覧ください。
(クリックすると拡大します)

まず最初に固定費を見てみましょう。
経常利益を100万円150万円にするためには、固定費を50万円100万円という規模で削減しなければならないことがわかります。
大企業で固定費がそもそも大きいのであれば50万円100万円の削減は可能だと思いますが、この例で示しているような月商1200万円程度の一般のECではこの削減は難しいですよね。

次に受注件数を見てみましょう。
経常利益を100万円150万円にするためには、受注件数を167件333件という規模で増加させなければならないことがわかります。
この前提は固定費を増やさない前提ですから、広告費を使うことはできません。
必死で色々な改善をしても、現状で月商1200万円程度のECがいきなり月間167件333件というレベルで受注件数を伸ばすことは非常に難しいはずです。

では変動費単価も見てみましょう。
経常利益を100万円150万円にするためには、変動費単価を250円500円という規模で削減しなければならないことがわかります。
変動費単価は1受注あたりの仕入れ値と運賃とクレジットカード決済手数料と梱包資材費の合計でした。
運賃もクレジットカード決済手数料も梱包資材費も、どんなに削っても250円にはならないですよね。
仕入れ値についても1%下げてもらうだけでも大変なのですから、やはり250円500円というレベルの削減は難しいと言わざるを得ません。

最後に客単価を見てみましょう。
経常利益を100万円150万円にするためには、客単価を250円500円という規模で増加させなければならないことがわかります。
これは難しいことでしょうか。
送料無料になる購入金額を値上げしたり、クーポンの配布を見直したり、ちょっとした工夫で客単価を上げることはできそうです。
もちろん簡単だとは言いませんが、固定費や受注件数や変動費単価の改善を狙うよりはずっと難易度が低いということは言えると思います。

まとめ

いかがでしたか?
利益構造を可視化すると、これまでとは見える景色が変わるのではないでしょうか。

記事の最後に客単価を上げることが最も合理的だという説明をしました。
しかし、客単価を上げると受注件数が減るのではないかという不安の声が聞こえてきそうなので、念のため説明しておきます。

受注件数が減ったとしても、167件までなら経常利益はトントンです。
もし客単価が少しでも上がっていれば、受注件数は167件以上の減り方でもトントンになる可能性が高いです。

ですから、受注件数の減り方具合を見ながら客単価の増加にトライするべきなのです。
安易な値引きを止め送料無料の条件も見直し送料自体も見直し、1円でも高く買って頂けるようにECサイトのデザインや画像クリエイティブ、そして説明文を見直しましょう。

改善は最初からすべてがうまくいくというものではありませんので、客単価が上がるのではないかと思うことをどんどんやっていけばよいと思います。
たくさんの改善にトライしていけば、うまくいくもの・うまくいかないものがはっきりわかるようになります。
とにかくやってみましょう!

なお、利益構造についてさらに詳しく学びたいという方には、西順一郎さんが書かれた「利益が見える戦略MQ会計」という書籍をオススメ致します。
この記事で紹介した利益構造の考え方をさらに詳しく、しかもわかりやすく説明してくれていますよ。

記事を書いた人

瀬川 直寛

利益を出すことに一生懸命なECが増えればと思い、このレクチャーを執筆しました。 ご質問などありましたら、問い合わせフォームからお送り下さい。順番に返信させて頂きます。